ホーム / BL / 残り火 After Stage ―未来への灯火― / Final Stage 第5章:深窓の令嬢2

共有

Final Stage 第5章:深窓の令嬢2

作者: 相沢蒼依
last update 公開日: 2025-12-04 05:44:22

***

俺の献身的な付き添いのお蔭もあるだろう。と一応自負するが、千秋の持つ鋼並みの精神力の賜物と言えばいいのか。それとも自然治癒力の高さなのか、1週間くらい経った頃から、飛び起きることはなくなっていた。

『穂高さんが傍にいてくれたから、立ち直ることができたんだよ。ゴメンね、ずっと引き止めてしまって』

済まなそうに謝ってくれたのだが、激しく首を横に振ってやる。むしろ俺が勝手に、傍にくっついていたかっただけなのにな。

「いいんだよ。千秋が元気になって本当に良かった。これで安心して島に帰れる」

島に帰る――また離れ離れに、なってしまうんだね……。

無言で伝わってくる気持ちが、俺の胸を痛ませる。寂しげな笑みを浮かべた千秋を、迷うことなくその場に押し倒した。

「わわっ! ちょっ、穂高さんってば、いきなりっ?」

「年末は、こっちに帰ろうと考えてる。だから――」

床の上に横たわってる千秋の顔色が、あからさま過ぎるくらいに苦渋の表情に変わった。

「千秋?」

「ごめっ……。帰って来てくれるのは嬉しいんだけど、就活の件や島に移住することとか話をするために、実家に帰省しようと思ってて」

「あー
この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで8

    *** お客様駐車場に車を停め、エンジンを切ってシートベルトを外してから車の外に出ると、早くしろといわんばかりに小林に腕を掴まれた。ふたりでホテルに向かってひたすら疾走する。 竜馬が裏道を使ったお蔭で、約束の時間よりも8分ほど早く到着したというのに、そんなこと知ったこっちゃないという感じで慌てふためく恋人の背中が、なぜだか愛おしく見えた。 ホテルの中に足を踏み入れた途端に走るのをやめて、急ぎ足で二階へと続く階段を駆け上った。帽子を被ったまま豪勢な場所に入ることに躊躇いを感じたので、被っていた帽子を慌てて小脇に挟めた状態で、小林に引っ張られた。 されるがままでいたら、廊下を突き進む小林の足がピタリと止まった。「時間ギリギリって昔と変わらないわねー。疲れた顔したオッサンとイケメンの組み合わせが、すっごく似合わない!」 突き当りにある大きな扉の前にいる女性が、小林に指を差しながら声を立てて大笑いした。「行き遅れた女の笑い声が下品すぎて、疲れが余計に増えたんだ。人の顔見て笑うんじゃねぇよ!」(この人、○○グランドホテルのホームページで見た安藤 薫さんじゃないか!) 竜馬から手を放して両手の腰に当てながら苛立った様子で安藤に近付いていく小林の後ろを、微妙な表情でついて行くしかない。「今さっきここで式を終えたばかりだから、雰囲気が漂っていると思うわ。厳粛なムードもバッチリだと思う」 面白くない顔している小林を見ながら、柔らかくほほ笑んで仲の様子を教えてくれた安藤に、竜馬はぺこりと頭を下げた。「あの、ありがとうございます。ホテルの支配人さん自ら、こんなことをさせてしまって……」「へぇ……。うっかりしている小林の相手らしい、しっかりした人じゃないの。良かったわね」「茶化すんじゃねぇって。竜馬もこんな奴に頭を下げることはないんだ、いい加減にしろよ」 そんな文句を言った小林の頬は赤くなっていて、安藤とふたりでその姿を見て笑ってしまった。「私からふたりへのプレゼント第二弾として、チャペルで流れている曲をプレゼントしてあげるわ。それを聞きながら、永遠を誓ってくださいませ」 安藤が両手で大きな扉を開けると、奥の方にある祭壇が目に留まった。オフホワイトを基調としたあたたかな空間と参列者が座る椅子がバージンロードを挟むようにたくさん置かれていたのだけれど――

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで7

    *** 午後からの配送を終え、やれやれと思いながら会社に戻った竜馬の目の前に、いきなり小林が現れた。「行くぞ!」「は? えっ!?」 わけが分からないまま小林が竜馬の腕を掴み、強引に外へと連れ出す。そのまま従業員が利用している駐車場に向かって、小林が乗っている白のセダンの助手席に押し込められた。呆然とした竜馬を尻目に、何事もなかったかのように小林は運転席に座るとエンジンをかけた。「もう、いきなり何なんですか?」 車内に響くエンジン音をかき消すような竜馬の叱責に、ちょっとだけ肩を竦める。「怒るなよ、時間制限があって慌ててたんだ。それよりもお前、今日はいつもより戻りが遅かったじゃないか?」「会社のすぐそばの交差点で工事があって、片側一車線通行だったんですよ」「俺が戻ったときにはやってなかったのに。タイミングが悪いな……」 チッと舌打ちして、ハンドルを叩く。「小林さん、質問に答えてくださいよ。出会い頭でいきなりの拉致に時間制限なんて、話が全然見えません」 胸の前で両腕を組み、横目で小林を睨んでやった。そんな竜馬の視線を受け、ありありとバツの悪い顔をする。「古くからの知人に頼み込んで、ホテルのチャペルを貸し切りにしてもらった。時間は午後7時半からの20分間だけ……」「チャペルの貸し切り。手元に指輪がないというのに、これまた先走りましたね」「……用意できてるって言ったら、一緒に行ってくれるか?」 言うなりジャケットのポケットからえんじ色の小箱を出して、中が見えるように開く。そこには、ふたつの指輪が仲良く並んで光っていた。「何で用意されて……。だって出来上がりは来週末の予定だったのに」「お前が宝石店で俺に噛みついただろ。一泡吹かせてやろうと、近くにいた店員にちょっとだけ相談したんだ」「いつの間に?」「竜馬が指輪のサイズを測ってる最中、こっそりとな。その人がなんと店長さんで、一部始終を見ていた経緯も関係して俺の話に乗ってくれた」 得意げに話す小林には悪いが憐れみを感じた店長さんの計らいは竜馬にとって、あまり気持ちのいいものではなかった。それはお揃いの指輪の出来上がりを楽しみに、指折り数えて待っていたせいなのだが――「しっかし、幹線道路の片側交互通行は厳しいな。時間が間に合わないじゃないか」 手にした指輪の箱をポケットに戻し、搭載され

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで6

    竜馬がお昼ご飯を食べに戻ると、事務所に小林の姿はなかった。(――くそっ、やっぱり逃げられた!) 被っていた帽子を脱いで、小林の傍で仕事をしていたおばさんに話しかけてみる。「お疲れ様です。今日は朝から何だか忙しなかったですね」「竜馬くんもお疲れ様! 小林さんの知り合いから、大口の仕事が入った関係でちょっとね。だけど店舗の売り上げに繋がることだから、忙しくてもへっちゃらよ」「そうだったんですか。それで小林さんはどこへ?」 店の外に促し、トラックの荷台で訊ねたときは「ちょっと、な……」のひとことのみで、詳しく説明してくれなかった。なぜ大口の仕事を隠したんだろうかと顎に手を当てて考える竜馬に、おばさんが朗らかに口を開いた。「その大口の仕事をくれた知人と一緒に、ランチしてくるって言ってたわ。仕事の打ち合わせも兼ねているから、2時間ほど戻らないそうよ。今まで仕事でランチするなんてしたことがないから、ちょっとだけ不思議に思ったの」「そうですね。珍しいというか……」「もしかして、婚活かもよ?」 告げられた言葉に、自分の笑顔が引きつるのが分かった。「えっと、そう思うのはどうしてでしょうか?」 恋人に黙って婚活するなんて絶対にありえないことなのに、そう考える根拠が知りたかった。するとおばさんは席を立って小林のデスクに移動し、デスクマットに挟まれていた名刺を取り出して竜馬の前に差し出してきた。引き寄せられるように、表面に印刷されている文字を読む。「○○グランドホテル支配人の安藤 薫さん? 随分と大きなホテルの知り合いなんですね」「うふふ。わたしたち同僚と顔を突き合わせてお昼を食べるより、綺麗な女性と一緒のほうが美味しくお昼を食べられるんじゃないかしら」 竜馬に見せた名刺を素早く元に戻すと、自分の使っているパソコンに何かを打ち込み、その画面を竜馬に見えるように向きを変えてくれた。画面は○○グランドホテルのホームページで、そこに映っていたのは支配人として顔写真が出ている、柔らかく微笑んだ安藤 薫さんの姿だった。(小林さんと同じくらいの年齢に見えなくもない。女性で支配人って、すごい人なんじゃないのか!?) 問い詰めようとした恋人が目の前にいないだけでも心が沈んでいるのに、竜馬の知らない事実を突きつけられたせいで、気持ちが暗いところへどんどん沈み込んでいく。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで5

    (今日は朝から忙しない感じだな、小林さん) 月はじめや月末じゃないのにも関わらず、なぜだか焦って仕事をこなしているように竜馬の目には映った。小林のあたふたしている行動のせいで、傍で仕事をしている事務のバイトのコやおばちゃんまでもが流されるように仕事をしている始末―― そんな姿を横目で捉えながら配達で使うトラックの鍵を手にし、帽子をかぶって小林のデスクに赴いた。必死に仕事をしていた小林だったが恋人の存在に気がつき、微笑みながら顔を上げる。「これから配達か、気をつけて行けよな」「はい。あの、その前にちょっとだけいいですか?」 竜馬は顎で扉を指し示し、一緒に外に出るように促した。 忙しいのになと呟きながらも、先に出ていく背中を追いかけた小林。たくさん駐車されているトラックの荷台の隙間へと誘導した。「今日は何か、前倒ししてやらなきゃならない仕事でもあるんですか?」 小林の仕事ぶりから想像したことを訊ねてみたら、目を見開いて固まる。ちょっとだけ焦りの見える表情は、らしくない感じだ。「ちょっと、な……」 竜馬の視線を外し、斜め上を見ながら口を開いた。「そんなに大変なら、配達が終わってからでも手伝いますよ?」「それまでに、絶対終わらせる!」「無理しちゃって。小林さんがそんなんだから、周りが気を遣っているのが分からないんですか?」「あ、まあ……。申し訳ないと思ってる」 両手を意味なくにぎにぎして落ち着きなく視線を彷徨わせる様子で、頭の中に疑問符が浮かんだ。この感じはまるで、あのときのシチュエーション――浜辺で指輪を貰ったときにしていた、小林の態度そのものだった。「……小林さん、何を隠しているんですか?」「何も隠してなんかねぇよ、怖い顔して睨んでくるなって」 口元を思いっきり引きつらせながら苦笑いを浮かべる姿で、隠し事をしていることが明白になった。「そんなおっかない顔をしてると、お客様に不審がられるぞ。ほらほら出発の時間だ」 自分のしている腕時計を目の前に掲げて、わざわざ時間を教えて追い払おうとする小林の無駄な努力に、竜馬は渋々乗っかることにした。「じゃあ俺がお昼に戻ったら、この話の続きをしますからね!」「ぉ、おう! 気をつけて行けよな」 小林の隠し事を暴く宣言をしっかりしてからトラックに乗り込み、エンジンをかける。それなのにどこか余裕

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで4

    大好きな男の顔がすぐ傍にあるのに、竜馬の心は沈んだままだった。「どんな気持ちで、俺がお前に指輪を渡したと思ってるんだ」「それは――その……」「ひとつはモテるお前に、変なのが近づかないようにするため。もうひとつは――」 困惑の表情で固まっている恋人の唇に、小林は触れるだけのキスをした。「俺から逃げられないようにするためだ。できることなら、首輪と足輪も取り付けたいくらいなんだぞ」「そんなに付けられたら、動くことができないじゃないですか」 冗談にしてはタチの悪い言葉に、思わず吹き出してしまった。いつもこうして、絶妙なタイミングで自分の中にあるマイナスな感情を癒してくれる彼に、頭が全然上がらない。「ついでに仕事を内勤にして、極力外部との接触を遮断したい俺の気持ちが分かっていないだろ」「そうですね。実際に誘われたことがありますし」「ゲッ! 本当なのかそれは?」「ええ。ぜひとも孫の花婿になってくれって、年配のお客さんに言われました」 竜馬が言うなり太い眉を逆への字にして、心底面白くなさそうな顔をした小林。「お前は年上キラーなのか!? そんな誘われ方があるのか」「恋人がいるので無理ですって、ちゃんとお断りしましたよ」「他にもあるだろ。お前のことだから心配させないように、たくさん隠し事をしているに違いない」「さぁ……」 あったところで全部断っているので、ないに等しいと思っていた。「隠し事してるだろ? 分かってるんだからな俺は。愛してるんだぜ、おい」 自分を射竦めるように見つめる視線から、小林の気持ちが表れていた。目を逸らさずに隠し事を全部言えと語っているそれに応えたいと思えど、やはり躊躇してしまうのは過去の出来事が踏み止まらせていた。 好きだった人に想いをぶつけた結果、目の前で壊れてしまった姿が今でも脳裏にこびりついている。同じように小林のことも壊してしまうかもしれないと考えると、二の足を踏んでしまった。「竜馬そうしてずっと、気持ちを押し殺したままでいる気なのか?」「あ……」「最初に言ったはずだぞ。地獄の業火に焼かれてもいいって。しかも意外と俺は頑丈にできてるんだ。体も心も鋼なんだぞ」「小林さんが頑丈なのは分かってるつもりです。でも……」 不安げに揺れ動く竜馬の視線に絡める瞳を細めながら、くちゃっと柔らかく微笑み、両腕を体に巻き

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで3

    アヤシげにうごめく小林の手に翻弄され、次第に息が乱れていく。 わざわざ路地を覗き込まない限り、自分がされている行為を見られることはないと分かっているのに、やっぱり気になってしまうのは、竜馬の頭の片隅に羞恥心が残っているから。 でもその一方で、このスリルを楽しむような気持ちがどこかにあって、小林の手の動きに合わせて腰を動かしてしまった。「やっ……んぅっ」「お前を乱すことができるのは、俺だけなんだぞ」 耳元で甘く囁かれる声にぞわっとし、快感に身を震わせながら竜馬はやっと頷いた。「俺を好きって言えよ。俺だけだって」「この手を退け、ないと、ぁあっ……言えませんって」「ズボン越しでも分かる。熱を持ってこんなに大きくなっているのに、止めていいのか?」 竜馬のお願いを聞いて手を退けたと見せかけ、小林のいきり勃った下半身をぎゅっと押し当てられる。「ぅあっ……ぁっあっあ!」 下から上に動かされるせいで、否が応にも感じてしまった。喘ぎ声がどうにも抑えられなくて、竜馬の口から自然と溢れ出る。「も……ヤバぃ、です、よっ」「数ヶ月で、随分と感度が上がったよな。ここだけじゃなく、こっちも」 小林の空いてる両手が双丘へと伸ばされ、感じるように揉みしだく。途端に竜馬の奥がきゅんと締まって挿ってくるはずの小林の分身を、今か今かと待ちかねるように疼きはじめた。「なぁ、そろそろ機嫌直してくれよ? 今度はちゃんと空気を読んで、指輪を渡してやるから」「更にぃ、機嫌が悪くなって……ること、くうっ……気がついてないでしょ」「何でだよ。どうして」 愕然として、息を切らす竜馬を見下した小林。自分だけが散々感じさせられた挙句に、乱れている現状に満足していないとは考えつかない、まったく空気の読めない恋人を、不機嫌満載な表情で眺める。「こんな場所で、はじめなくてもいいでしょ……」「だってお前の機嫌を直したくて、つい」 ご主人様に叱られてしょぼんとした犬のように、小林の表情が一気に暗くなった。「竜馬に指輪を渡して、俺だけのものだっていう目に見える印をつけてもらえると思ったのに、サイズは間違えちまうし、たまにはこういうところでイチャイチャしたら、もっと好きになってくれるかと思ってだな」「何を言い出すかと思ったら。俺は小林さんが好きなのに」「竜馬、口だけなんだよ。お前の気持ち

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   番外編 トロけるようなキスをして――

    その日は空気が凛と澄んでいて、とても寒い夜だった。 コンビニのバイトがいつもの時間に終わり、手を擦り合わせながら肩を竦めて店の外に出る。夜空を見上げるとそこには、雲ひとつない空にキレイな星が、これでもかとキラキラ瞬いていた。「ひとりで見るよりもふたりで見た方が、もっとキレイなんだろうな……」 今、隣にいないあの人のことを思い、胸の中がきゅっと切なくなる。 俺の名前は紺野 千秋。市内の大学に通う二年生。親の仕送りとバイトで生計を立てていた。 はーっとあたたかい息を両手にかけて、俯きながら歩き出した途端、身体を奪うように後ろから強く抱きしめられた。包み込んでくれるその二の腕は絶対に

    last update最終更新日 : 2026-03-31
  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   番外編 ―純血の絆―

    あ、金縛り――。 疲れが溜まっていたりストレスが溜まったりすると、寝ている間に足がつったり金縛りにあったので、いつものヤツだと思ってじっとしていた。 穂高さんに逢えない寂しさやバイト、その他もろもろのストレスのせいで金縛りにあったんだな。いつ解けるだろうか? 動かせる場所を探すべく、そっと目を開けてみた。「!!」 ベッドの脇に、誰かいるではないか!「あ……ぁ…っ」 ――声が出ない……。どうしよう、泥棒!? ウチには金目のものなんて、全然ないのに(涙) 寝る前にきちんと閉めたはずのカーテンが半分だけ開いていて、傍に立ってる人の姿を月明かりが照らし出してくれた。「雨が止んだん

    last update最終更新日 : 2026-03-31
  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   想いを重ねる夜17

    *** 穂高さんの作ってくれた朝ごはんを揃って食べてから、お父さんをフェリー乗り場まで見送るために家を出た。見送ると言った矢先に「そんなのいらん!」と怒りを露にしながら、頑なに抵抗する言葉を発したお父さんを見て、穂高さんはカラカラ笑いだす。「千秋と同じように、強がることを言っているお父さんを見ていると、思わず愛着がわいてしまいます」 なんてサラリと口にしたお蔭で、お父さんは心底嫌そうな表情を浮かべて、むっつり黙り込んでしまった。 これにより口の達者な元ホストには、親子そろって勝てそうにないことが、嫌というほどわかった。「穂高さんってば、怖いもの知らずというか、本当にすごいと思う」

    last update最終更新日 : 2026-03-30
  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   想いを重ねる夜19

    「いっ……ほっ、あ~~~っ、めんどくさいっ!」 忌々しげに顔を歪ませながら苦悶するお父さんに向かって、穂高さんは朗らかに笑いながら話しかけた。「なにか言いたいことがあるのなら、きちんと名指ししたうえで仰ってください。それ以外ではお受けできません」(うわぁ、ここにきて穂高さんのワガママが炸裂なんて、間を取り持つ俺の気持ちを考えてほしいよ……) 苛立ちや困惑などなど、目に見えないそれぞれの空気が三人に流れたが、お父さんの盛大なため息がそれを無にした。怒鳴られる合図にもなっているそれに、俺は自然と身構えるしかない。「いいか、よぉく聞け! 千秋は大事な息子だ。それは俺だけじゃない、紺野一族

    last update最終更新日 : 2026-03-30
続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status